救える命を増やすべく、目指したのは「画像診断専門医」。アメリカでの出会いに背中を押され、夢を現実のものへ

どうぶつの総合病院 専門医療&救急センター  画像診断科
主任 福田 祥子先生

動物に関わるさまざまな分野のトップランナーにお話を伺う「The specialist」。
今回は、どうぶつの総合病院専門医療&救急センター 画像診断科主任・福田祥子先生のインタビューをお届けします。

「画像診断専門医」の資格取得を目指し、思い切って飛び込んだアメリカの地。  右も左もわからない環境下で福田先生を支えたのは、現地でのさまざまな出会い、そしてアメリカ文化らしいポジティブなサポートでした。

「画像診断」の大切さに気づかされた一次診療での経験

── まずは、福田先生のご専門である「画像診断専門医」について、どのようなお仕事かをお聞かせください。
画像診断専門医は、担当医やかかりつけの先生など、臨床の現場におられる先生方から依頼されたレントゲンやCT、MRIを読影して診断することで、その先生方の治療法の選択をお手伝いをする仕事です。

── 2016年、アメリカで「画像診断科専門医」の資格を取得されていますが、この資格取得を目指した背景はどのようなものでしたか?
私は大学卒業後から臨床医として長く働いていましたが、日々の診療の中で、どうしても診断がつかずにそのまま亡くなってしまう動物たちを何度も目の当たりにしました。

どうしていたらこの子達を助けられただろうか…と常に自問自答するなかで、画像検査をきちんと理解して正しい診断を最初に出すことができていたのならば、もっと違う結果になったのではないかと考えるようになったんです。

そうした気づきが、私の画像診断専門医へのはじめの一歩となりました。


その後いろいろなご縁があって勤務した病院で、アメリカで腫瘍の専門医資格を取得された先生と出会うことができたのですが、その出会いも、専門医を目指すことになった背景のひとつにあります。そこでは先生の専門的な知識に圧倒され、自分も画像診断という分野で同じように専門的な知識や技術を身につけたいと強く思うようになりました。

ですが当時の日本には画像診断を専門的に勉強できる場所がなく、それならば私も先生と同じようにアメリカで専門医資格を取得できないだろうか、と。そうした思いから、渡米を考え始めました。

多くの出会いに背中を押され夢を現実に

── アメリカで専門医資格を取得する過程で、どういったところに苦労しましたか?

一番大変だったのは、専門医の資格取得における情報が乏しかったところです。
私がアメリカに行った頃は日本の専門医の先生が数えるほどしかおらず、情報がまったくと言っていいほどありませんでした。今でこそ日本に帰国している専門医の先生方もたくさんいるので多くの情報を手に入れることができますが、当時は、専門医を目指すといっても何をしたら良いのかすらわからない状況です。

それだけに「専門医」というものがあまりにも遠い存在だったのですが、実際の現場を見ずに考えていても仕方がないと思い、とりあえずアメリカの大学へ見学に行くことにしました。


── そういった厳しい条件のなか、どのようなステップで資格取得にまで至ったのでしょうか?
だいたいのアメリカの大学には「ビジティングプログラム」という見学者を受け入れてくれるシステムがあるので、これを利用してカリフォルニアの大学へ見学に行きました。

また、大学の恩師からプライベートの病院を紹介してもらい、2ヶ月ほど滞在させてもらいました。トータルで3ヶ月ほどアメリカに滞在することができましたが、さまざまな国から専門医を目指して同じ大学に来ていた獣医師のみなさんや、専門医・レジデントの先生方、ホームステイさせてくださったご家族やその友人のみなさんなど、周りの方々がすごく親身になって応援してくださったことで少しずつ自信がつき、そんな自分の成長とともに、少しずつコネクションも広がっていったという感じです。


── 人との出会いにも恵まれたのですね。
そうですね。アメリカで出会ったみなさんには本当に助けられましたし、考え方も大きく変わりました。当時の私は、競争率が高いアメリカのレジデントというポジションに対して、わざわざ大した経歴もない外国人を採用するということがありえないことのように感じ、自分が応募しても仕方がないのでは?と思っていました。

なので、アメリカ滞在の間に出会った方達に「なんでアプライ(志願)しないの?」と、まるで普通のことのように言われたときは、すごくびっくりしたことを覚えています。これは、多民族国家のアメリカにはいろいろな国籍やバックグラウンドの人がいて当たり前という文化が根付いていて、応募者の国籍ではなく、画像診断を勉強したいという熱意がどれだけあるかや、チームの一員として協力的な姿勢を持てるか?を採用の基準としているからこその考え方です。

こうして偶然出会った多くの方と接しているうちに、だんだん外国人でも応募しても良いのではないかと思うようになり、チャレンジすることを決めました。その後も応募書類の揃え方から面接の練習まで、何もわからない私をたくさんの方が助けてくれ、「困っている人がいたら手を差し伸べるのが当たり前」というアメリカの文化に本当に感激しました。

たくさんの方に背中を押してもらったおかげで、専門医の資格を取得することができたと感じています。

── その後帰国をされ、現在はどうぶつの総合病院でお仕事をされていますが、ここに至った経緯をお聞かせください。
ペンシルベニア大学でレジデントとして学んでいたちょうど同じころ、今この病院にいらっしゃる何人かの先生もアメリカにいらっしゃったのですが、その先生方とのご縁で画像診断科の獣医師としてお誘いいただいたのがきっかけのひとつです。

── あらためて日本の獣医療に携わり、アメリカと日本の獣医療における違いを感じることはありますか?
やはり大学での「教育」においては、大きな違いを感じますね。
アメリカは教育がしっかりとシステム化されていて、勉強しなければいけない範囲が明確に決まっている、かつメンター制度もあるので、漏れることなく十分に知識を身に付けることができます。さらには、日本の大学よりも臨床現場でのローテーションに力を入れていて、この違いはとても大きいと言えるでしょう。

はじまりは自分の可能性を信じることから

── 画像診断科専門医として、日々大切にしていることをお聞かせください。
ただ単に画像を読むのではなく、担当医の先生方の求めていることを想像しながら、臨床的な背景を考えて答えを出すことを大切にしています。
また、このどうぶつの総合病院は重症の動物たちを受け入れる施設なので、そんななかでもより緊急性が高い症例を優先的に検査し、少しでも多くの命が助かるような診療を心がけています。

──  最後に、これから獣医師(専門医)を目指す方へのアドバイスをお願いします!
今はだいぶ情報も増えているので、資格取得へのチャレンジもしやすくなってきています。とはいえ、まずは自分に“可能性がある”と思わなければ何もはじまりません。

自分なんか…とあきらめるのではなく、何か足りない要素があるならばそれを補うために何が必要か、しっかりと情報を集めながら挑んでいく。その姿勢さえあれば決して夢の中の話ではないので、ぜひ積極的に挑戦をしていってください!

<プロフィール>

福田 祥子(どうぶつの総合病院 専門医療&救急センター  画像診断科 主任)

◾️学位・称号・資格
獣医師、米国獣医画像診断専門医

◾️略歴
2003年
酪農学園大学 獣医学部獣医学科 卒業
2013-2016年
University of Pennsylvania
School of Veterinary Medicine
Section of Radiology レジデント修了
米国獣医画像診断科専門医取得
2016年
どうぶつの総合病院 専門医療&救急センター 画像診断科 主任

◾️論文実績
論文実績はこちら

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