猫好きが熱狂する理由とは?“写真パネル”だけじゃない「ねこにすと」の魅力と進化の裏側

株式会社ブレークポイント取締役 / ねこにすと運営責任者

染谷 理絵さん

今回お話を伺ったのは、「ねこにすと」イベントの立ち上げから全国展開までをけん引してきた仕掛け人・染谷さんです。

写真パネル展示から始まり、今や企業協賛やアプリ・WEB通販事業にまで発展している「ねこにすと」。ペットビジネスの真骨頂とも言える“ファンビジネス”を着々と築き上げている染谷さんに、猫好きが集うコミュニティを築くうえで大切にしていること、そしてイベント運営の裏側や苦労についてなどをお聞きしました。

立ち上げのきっかけは“ご縁”と“流れ”

ー どんなきっかけでねこにすとが始まったんですか?

元々は映像制作の会社にいて、日本の美味しいものを紹介する番組のWebデザインを手伝っていました。その後は飲食のキッチン担当の経験を活かして番組で使う料理の盛り付けや撮影アシスタントもしていました。2018年に番組が終わった時、うちの代表が『自分たちで生み出す仕事をやりたい』と動き出して、伊勢丹三越のバイヤーさんと出会い、番組でやっていた「日本の美味しいもの」を紹介するポップアップイベントを実施することになりました。

一度目の食のイベントの後に『食以外で何かない?』と聞かれて、芸能人の周年記念の写真パネル展をやったんです。ただ、周年企画って当然そうしょっちゅうあるわけでもなく限界があるなと。そんな中、インスタで『#猫』が1位になったことをきっかけに『猫のパネル展、いいかも』と社内で盛り上がって。そこから「ねこにすと」という名前の猫企画がスタートしました。

ー どのような企画ですか?

ひとことで言うと、猫の写真パネル展示イベントです。

でも、ただ写真パネルを飾っているだけではなく“猫コミュニティ”が生まれ、大きくなる場を私たちが作っている、という感じです。猫の写真をインスタで募集し、選ばれた猫ちゃんをパネル化して展示する、シンプルな内容ですが、そこに投票の仕組みをプラスしました。

イベントで入場券を購入したり、物販を1000円以上購入すると投票シールがもらえて、自分の猫や推しの猫に投票ができます。投票で上位になると、自分の猫ちゃんのオリジナルグッズがもらえたり、インスタで紹介されたり、トロフィーがもらえたり…などの特典があります。

ー 初期はどんな風に広がっていったのですか?

最初はフォロワーもいなかったので、インスタで可愛い猫ちゃんを見つけては直接DMして『写真を飾らせてください』とお願いするところから。伊勢丹での初開催後、丸井の担当者さんがプレスリリースを見てくれて有楽町丸井でも開催。その後は口コミや企業の紹介でどんどん全国に広がっていきました。

飼い主さんも、自分の愛猫の写真を飾って投票を集めたい、SNSなどでファンになった“推し”の猫ちゃんに投票したい、などそれぞれの目的でイベントに参加してくれる方が増えていきました。

コロナ禍がもたらした“追い風”とイベントの成長

ー その後コロナ禍に突入しましたが、イベントにどう影響しましたか?

それが逆に追い風になったんです。商業施設では空きテナントが増えたこともあり『人が集まりすぎないイベントをやりたい』という相談を多くいただくように。猫の写真展は動物を連れてくることもなく、喋ったり歌ったりすることもない。展示を見るだけなので感染リスクも低く、ぴったりだったんです。そこから全国の丸井やイオンなどで開催できるようになって、フォロワーも急増しました。

ー ビジネスとしては、イベントの収益がメインだったのでしょうか? 

はい。でも正直なところ、イベント収益だけでは厳しかったです。その後は企業からのサンプリング案件やSNSマーケティングの仕事も増えて、少しずつビジネスになっていきました。もちろん営業活動は必須だったので、展示会を回って怪しまれながら名刺交換して(笑)。後日招待状を必ず送り、少しづつ企業の方にも来ていただく機会が増えました。私たちのイベントは、来てみるとその盛り上がりが伝わるので、そこからご縁が繋がる、ということがほとんど。地道で時間がかかりますが、まずは見て感じていただくことを大切にしています。

ー 苦労もありましたか?

めちゃくちゃありました。展示している写真は飼い主さんが撮影した猫の写真なので、『インスタでも見られるじゃん』『プロカメラマンの写真じゃないんだね?』などと言われることも多かったので…。でも、イベントに来てくれた人はみんな『なんだこれ!』って驚くんですよ。

特に『ご挨拶シール』という文化は、イベントに来た人同士のリアルな“いいね”で、すごく盛り上がる仕組みになりました。

ー 『ご挨拶シール』とはどういったものでしょうか?

展示写真にぺたっと貼る小さなシールです。「来たよ」「応援してるよ」と言うような意味を込めて、お客様が貼ることがこのイベントの定番になりました。これはお客様から生まれた取り組みなんです。初め     、展示写真のプロフィール欄にお客様がペンで自由に書き込めるようにしていたら、文字やイラストを描く人が現れました。

次にスタンプを押す人が出てきたと思ったら、お客様が手作りのシールを貼るようになって。これまでウェブ上の「いいね」ボタンを押すことのリアルバージョンだと捉えています。

受け身で見ているSNSと違い、実際に会場に足を運んでシールを貼って…という体験が猫コミュニティを自然に進化させたのだと思います。

ー 否定的なご意見もあったとか?

はい、実は「自分のパネルに勝手にシールを貼られるのは嫌」などといった理由で、ご挨拶シールを好まない方もいます。

ただ、ファンビジネスには必ず賛否が生まれると思っているんです。「これは違う」「なぜこんなことをするのか」といった意見が出るのは当然ですし、否定的な声は特に強く聞こえがち。その一方で、楽しんでくださっている多くの方はわざわざ大きな声を上げません。だからこそ、私たちは実際に会場に足を運んでくれる人の姿を見て、その反応を大切にしています。

一時は迷いもありましたが、実際にアンケートを取ったところ、ご挨拶シールを「なくてもいい」と答えた人は5%未満。ほとんどの方が「あった方がいい」と答えてくれました。それを受けて、私たちは迷わずその多数派の声に寄り添うと決めました。

もちろん否定的な意見にも意味はあると思います。ただ、それをすべて取り入れるのではなく、「うちはこういうイベントなんです」と信じて貫く姿勢も必要だと感じています。

ねこにすとの“進化”と未来に向けた挑戦

ー ただの写真展イベントではない仕組みづくりがすごいですね

ありがとうございます。ねこにすとは“猫コミュニティ”そのものだと思っています。オンラインとオフラインを融合させたことによって、イベント時は体験ができ、イベントがない時はオンライン上で繋がることができる。写真応募や投票シールなど、体験としても楽しいし、飼い主さんが自発的にいろいろな発信をしてくれるので、自然にコミュニティができていくのが魅力なんです。

ー 今後やってみたいことはありますか?

ねこにすとのお客様とペット企業の皆様を橋渡しできるようなサブスクを検討しています。猫のフードはなかなか試す機会がないので、試せる場を作りたいんですよ。猫の腎臓や健康に配慮したものを提供できたらと。

また、ペット業界全体の課題でもありますが、猫の飼育頭数をもっと増やせるような取り組みができたらと思っています。猫を飼う場合、保護猫の譲渡も選択肢としてポピュラーなのですが、初めての方には少しハードルが高く感じられてしまうことも。でも、実際に保護猫カフェなどに足を運んでみると、人に慣れている猫たちがたくさんいて、「犬を飼っていたけど、猫もいいかも」と感じる方も多いんです。

そうした“出会い”の機会をもっと増やしていけたら嬉しいですね。猫コミュニティって、ちょっとディープな印象を持たれがちかもしれませんが、実際はすごく楽しい。だからこそ、少しでも多くの人にその楽しさを知ってもらって、猫との暮らしに一歩踏み出すきっかけをつくれたらいいなと思っています。それが業界全体の盛り上がりにもつながっていくと信じています。

ー 最後に、ペット業界へのメッセージをお願いします

もっと横の繋がりを増やせたらいいなと思っています。企業の方に協賛をしていただくなどももちろん嬉しいですけど、それだけではなく『一緒に盛り上げようよ』っていう気持ちで多くの人と繋がりたい。人との“ご縁”を大切に、これからも楽しくねこにすとを続けていきたいです。

公式ホームページ:https://nekonist.com

Instagram:https://www.instagram.com/neko_nist

【プロフィール】

染谷 理絵 (そめや りえ)

6月24日生まれ千葉県柏市出身

株式会社ブレークポイント取締役
ねこにすと運営責任者
WEBデザイン、グラフィックデザイン、SNSマーケティング担当

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