独自の特許に基づく「動物病院にひも付いたオンライン処方」で、ペットと暮らす飼い主の暮らしをもっと便利に、安心に──」。動物薬業界一筋38年の氏政雄揮さん(アームズ株式会社 代表/獣医師・獣医学修士・医薬品登録販売者)が、そんな想いから立ち上げた新サービスが「Vm3®︎(ブイエムスリー)オンライン」です。
全国の各地域に根ざした獣医療を次のステージへ導くこの仕組みについて、氏政さんにお話を伺いました。
飼い主のために。特許取得の“日本初”仕組みをスタート
- この新サービスを立ち上げた背景を教えてください
詳しくは後述しますが、米国では約75%の動物病院が、ペットの飼い主に処方薬(要指示医薬品)を含めて動物用医薬品をオンラインで処方販売できる仕組みを導入しており、これはすでに一般的な形となっています。
一方、日本ではそのような仕組みはまだ整っていません。そこで、飼い主がオンラインでかかりつけの動物病院に処方薬を注文し、処方を受けられる共通プラットフォーム「Vm3®︎オンライン」を開発しました。
飼い主はかかりつけ動物病院のアカウントを打ち込み、獣医師の診察を受けて発行する「指示書番号」を入力することで、処方薬を安心、便利に購入できるようになっています。ノミ・マダニ駆除の一般薬など、これまで他のネットショップでも購入できたものに加え、心不全治療薬、鎮痛薬、アトピー性皮膚炎治療薬などの要指示薬も動物病院と連携してオンラインで注文できる――それを医薬品医療機器等法など法制度に準拠したかたちで実現したのは、日本では初めてです。
仕組みはどう回る?――“いつもの動物病院で診察を受けて、薬は家に届く”

ー このシステムの流れを教えてください
基本は飼い主が「Vm3®︎オンライン」の中にかかりつけ動物病院のアカウントで入り、注文して、獣医師の確認を得た後に直接自宅に届くという構造です。動物病院はアカウントを通じて処方販売を管理し、バックエンドでは店舗販売業をもつ動物薬ディーラー(卸)など関連会社が配送等を担います。調剤が必要な医薬品については薬局の協力を得ることも予定しています。
これにより、動物病院ごと・製品ごとに価格設定が自由にでき、在庫リスクを最小化できるようになりました。
私は15年以上前から、「動物薬ディーラーが動物病院にネットシステムを提供し、病院が自院名義のオンラインストアを運営して飼い主へ直送する方式」を提唱してきました。当時は特許を出願していませんでしたが、複数の動物薬ディーラーがこのアイデアを取り入れ、ペットフードやサプリメントを病院経由で販売するシステムとして実装しておられ、現在では広く定着しています。
今回、特許を取得した「動物用医薬品処方販売システム」(テレメド®︎システム)は、その構想を動物用医薬品、それも一般動物用医薬品だけでなく要指示医薬品までを含む形にして発展させた実装版なんです。
“地域密着”をかたちに。尾山台フェスティバルでの手応え

ー 地域でも動きが始まっているとか?
はい。私たちの本社がある世田谷区・尾山台で2025年10月に開催された「尾山台フェスティバル」にブースを出展しました。その場で約50名の地元の飼い主さんがLINE登録をしてくださいました。お話を伺うと、「動物病院に連れて行こうとすると異常に興奮するので連れて行けない」「この子(ワンちゃん)だけでなく飼い主の私も高齢なので、動物病院に毎月は行けない」など反響の大きさに驚き、同時に需要があることを実感しました。
私は日本全国でこの20年間、獣医師やメーカー、動物薬ディーラーなど動物医療関係者に講演しており、その際「獣医療は地域密着のサービス業」だと伝えています。だからこそ、まずは自分の地元から少しずつ、この仕組みを広げていきたいと思っています。
私は獣医師でもありますが、医薬品登録販売者の資格も取得しています。
また弊社では薬剤師さんも働いてくださっていて、東京都庁から動物用医薬品卸売販売業や動物用医薬品店舗販売業の許可も受けています。
これからは登録してくださった飼い主さんとのつながりを大切にしながら、導入する動物病院と利用する飼い主さんを少しずつ増やしていければと願っています。
飼い主にはメリットを、獣医師には課題解決を

ー 飼い主にとってはどんなメリットがありますか?
メリットはいくつもあります。まず、通院や会計の負担が減ることです。診療や検査は動物病院で行い、薬の購入はオンラインで完結できる。さらに、かかりつけ医とのつながりを保ったまま、価格や供給の透明性を高められます。慢性疾患で病状が安定していれば、かかりつけ医の判断によりネット注文で薬を処方することも可能でしょう。
また、弊社のVm3®︎オンラインは、遠隔診療での受診と関係なく、飼い主さんが要指示薬でも獣医師からの処方せんや指示書をお持ちであれば注文できるのが強み(一般薬では処方せん等は不要)ですが、もちろん遠隔診療と組み合わせることも可能です。
現在の獣医療の遠隔診療ガイドラインでは、初回は動物病院で対面での診察が必須ですが、2回目以降は同じ病院であれば遠隔診療も可能になっています。まだ遠隔診療を実施する動物病院は限られていますが、5年後にはもっと増えているのではないでしょうか。
将来的には、ペット保険と連携して処方時点で割引が適用される仕組みも視野に入れています。慢性疾患に罹ったペットの治療薬を、ネットで飼い主が注文して決済した際、たとえば5割引、7割引で動物用医薬品を購入できたら素晴らしいと思いませんか?私の特許は2041年まで有効です。まだ15年間もありますので、それまでには実現できていると思います(笑)。
ー 動物病院側にもメリットがあるのでしょうか?
獣医師がネット販売に関わる際の長年の課題を解決する一つの仕組みになればと考えております。動物病院にとってのメリットは、以下の3つが挙げられます:
①弊社システムでネットで動物用医薬品を飼い主さんに処方販売できます。弊社では動物用医薬品を飼い主さんに販売するために、薬剤師や医薬品登録販売者を雇用して店舗販売業を取得しています。各動物病院で薬剤師さんを雇用する必要なく、ネット販売する仕組みが構築できます。
②ネットで販売する薬や製品の価格を自院の判断で柔軟に決められます。他社で動物病院のアカウントに紐づけてサプリメントやペットフードをネット販売されている事例の場合、動物病院が得られるマージンは10%や20%などと固定されていることが多いですが、弊社のシステムでは特許に基づき、実際の動物病院での診療時と同じく、処方価格を自由に設定することができます。
③要指示医薬品を獣医師の指示書をもとに飼い主がオンライン上で購入できるという選択肢を増やせます。獣医師法と獣医療法上では、獣医師に院外処方に切り替える義務はなく、飼い主さんから「指示書や処方せんを発行してほしい」と要請されても断ることが可能です。獣医師は診察後に院内で薬を渡すことが一般的であり、大半の動物病院ではその方法は今後も変わらないのではないかと予測します。
しかし弊社の特許システムを利用することで、前述の通り、飼い主側には大きなメリットと確かな需要があります。そのため、この仕組みを採用した動物病院では、その利点をより広く飼い主にも届けることができるでしょう。
これからの時代は、需要がさらに多様化・細分化していくと予想しています。
前述の通り日本では多数派になるとは限りませんが、そうした飼い主側の需要の変化に獣医師が対応していくための先進的な動物用医薬品の処方販売のあり方の一つが弊社の「テレメド®︎システム」だと確信しています。
自院のアカウントに紐づいた継続処方が可能になり、診療だけでなく薬の価格や処方販売方法を自院の判断で柔軟に決められるようになります。オンライン診療は必須ではありません。より現実的で公平で透明な獣医療が可能になる――そして、“薬を院内で出す”から“制度に則って飼い主の自宅に届けられる”という流れに変わります。
米国との比較から見える未来

ー 米国ではどんな状況ですか?
図は、欧米でアニマルヘルス分野における有名なコンサルティング会社であるBrakke Consulting社が調査報告書として発行している「2024 Brakke Pet Medicine Home Delivery Study」からの抜粋ですが、米国では1990年代後半から処方薬のオンライン販売が広がり、現在では約30,000軒の動物病院のうち、約75%が動物薬ディーラー提供のオンラインストアを利用しています。
その売上は合計で1,049百万ドル(約1,660億円/1ドル=158円換算)にのぼり、2021年から2024年の3年間で2倍以上に増加しています。
日本国内の全ての動物種(犬・猫・牛・豚・鶏・魚など)を合わせた動物用医薬品の年間売上が約1,500億円であることを考えると、米国ではそれに匹敵するか、それ以上の金額が、小動物だけの動物病院のオンラインストア経由で飼い主によって購入されていることになります。日本の動物用医薬品の約6割は外資系製薬会社によって供給されており、彼らはすでに米国で起きているオンライン販売の拡大を目の当たりにしているはずです。
その流れを踏まえると、時間差はあるものの、日本でも同様のシステムを導入しようとする企業が必ず現れるでしょう。
だからこそ、日本の制度や商慣習に合わせ、飼い主・動物病院・動物薬ディーラーの三者にメリットが行き渡る仕組みを、まずは私自身が形にしたいと考えました。
前述の通り弊社ではすでに特許を取得しており、海外のシステムとの差別化や、日本独自の運用にも対応できるようにしているのが特長です。
獣医療がもっとやさしく、もっと身近になる未来へ
ー 今後の展望を教えてください
5年後、10年後を「こうなる」と断言することはできませんが、こうなったらいいなという理想はあります。
たとえば、日本でも米国のように、動物病院の多くがオンラインストアを持ち、心不全やアトピー性皮膚炎の治療薬など、慢性疾患の薬を獣医師の診察と処方を前提に安心して購入できる時代が訪れる。
さらに、ペット保険とオンライン処方が連動し、保険の内容に応じて薬代が割引になる仕組みができれば、飼い主の負担も大きく減るでしょう。
そのために私たちの特許技術が役立つなら嬉しいと思いますし、もちろんそれ以外のソリューションがあれば、そちらの方法でも構いません。目的はあくまで、飼い主と動物たちがよりよい環境で暮らせることなんです。
この仕組みを支えるのは、全国にいらっしゃる動物薬ディーラーの皆さんだと思っています。地域の動物病院がその地域の飼い主を支えているように、地域のディーラーが動物病院を支える構造が続いていくことを願っています。この「Vm3®︎オンライン」のシステムは、その関係を崩さずにサポートできるよう考えております。
今はまだ忙しくて後進育成に時間を割く余裕はありませんが、いつか一緒に志を共有できる人が現れたら、これまで培ってきた知識や経験は惜しみなく伝えたいと思っています。
また、獣医系大学などの基礎研究に対して、企業がきちんと監査の取れる形で研究費を提供できる仕組みもいつか作りたい。民間からの支援が、透明で信頼できる形で回るようにすることで、獣医学全体の発展にもつながるはずです。
夢のような話かもしれませんが、理想を語ることが次の世代への種まきになると信じています。
【サービス情報】

サービス名:Vm3オンライン
オープン:2026年1月24日
運営:アームズ株式会社(代表取締役・獣医師 氏政雄揮)
特許:動物用医薬品処方販売装置及び動物用医薬品処方販売プログラム


