
「愛犬と泊まれる宿」は、いまや珍しいものではなくなりました。
そんな中、OMO by 星野リゾートが横浜・大阪・五反田の3施設を対象に打ち出しているのが、「愛犬都市旅宣言」です。
それは単なる“犬同伴可能な宿泊施設”ではなく、“愛犬と都市を楽しむ”という、新しいライフスタイル提案にも見えました。
今回Pet Biz JAPANでは、その象徴的な施設の一つとして2026年4月に開業した「OMO7横浜 by 星野リゾート」を取材。総支配人の羽毛田(はけた)実氏、サービスチームの仁藤美夢里氏にお話を伺いました。
「愛犬と街を楽しむ」ためのホテル

JR関内駅から徒歩1分。旧横浜市庁舎跡地を活用した大型複合街区「BASEGATE横浜関内」の中に、OMO7横浜はあります。
市庁舎の趣を残すエントランスに入ると、リードをつけた愛犬とともにチェックアウトする宿泊客の姿が目に入りました。
“犬同伴可能”というより、“愛犬と過ごすことが自然に溶け込んでいる”、OMO7横浜の空気感を象徴するような光景でした。
客室は全276室のうち、1フロア32室を愛犬専用として設計。これはOMOブランドとして最多だそう。
客室タイプは、「ドッグフレンドリーダブルルーム」「ドッグフレンドリーデラックスルーム」「ドッグフレンドリースイート」の3種類。スイートルームでは大型犬2頭まで宿泊可能で、最大6名まで利用できます。


「オープン直後にも関わらず、多くのお客様にご予約いただいています。本当にありがたいですね」と羽毛田氏。
さらに今回の取り組みについて、「犬と泊まれる部屋を作った」というより、“愛犬と街を楽しむ滞在”を考えた結果だと語ります。
「横浜って、中華街もありますし、みなとみらいもありますし、街自体を楽しめる場所なんです。だから“ホテルの中だけで完結する”というより、“愛犬と街へ出ていく”ことを前提に考えていました」
愛犬とともに街を歩き、都市を楽しむ。その体験を支える拠点として、OMO7横浜は設計されているように感じました。

都市型ホテルだからこそのドッグガーデン
愛犬専用フロアの中でも象徴的な空間となっているのが、「OMOドッグガーデン」です。

屋内ドッグラウンジと屋外ドッグランが一体となった共用空間で、室内には大型のボールプールも設置されています。
印象的だったのは、都市型ホテルでありながら、屋内だけで完結させず、屋外ドッグランまでしっかり設計されている点。
ドッグランは小型犬専用も用意されており、犬種やサイズごとの過ごしやすさにも配慮が感じられます。

屋外スペースからは横浜スタジアムも見え、横浜という街の空気感そのものを愛犬と共有できる設計になっていました。


また、OMOブランドの特徴的なサービスの一つに、「Go-Kinjo(ご近所)マップ」があります。
スタッフが実際に街を歩いて集めたローカル情報を紹介するもので、全国のOMO施設でも展開されている定番コンテンツです。
その中でOMO7横浜では、“愛犬同伴”に特化したご近所マップを展開。
興味深かったのは、単に“ペット可”と記載するだけではなく、
・店内同伴可能なのか
・テラス席のみなのか
・大型犬まで対応しているのか
といった情報まで細かく掲載されていた点です。
地域を知り尽くし、お客様にご案内する「OMOレンジャー」の一員である仁藤氏は、「“ペットOK”と書いてあっても、実際に行くと条件がかなり違うこともあります。だからこそ、自分たちで確認した情報を届けたいと思っています」と話します。
“犬OK”という言葉は、一見わかりやすいようでいて実際にはとても幅があるもの。
だからこそ、“愛犬とどんなふうに過ごせるのか”という解像度で情報設計している点に、犬と街歩きをするお客様への理解、やさしさを感じました。
犬と泊まれる、は「課題解決」ではない

今回の取材で印象的だったのが、羽毛田氏が話してくれた「気づき」でした。
羽毛田氏自身、長く犬と暮らしていた経験があり、出張などで家を空ける際には、預け先探しに苦労したこともあったそうです。
そのため当初は、「犬と泊まれる場所」というのは、“犬を預けなくても済むようにするための課題解決”だと思っていたと言います。
しかし実際には、少し違った。
「不便を解消したいから一緒に泊まりたい、というより、“一緒に楽しみたい”んですよね」
その言葉は、今回のOMO7横浜の立ち位置そのものを表しているように感じました。
犬と泊まることは、あくまで手段。
本当に提供したいのは、“愛犬と過ごす時間”なのだと感じました。
中華街を歩く。
みなとみらいを散歩する。
旅先の空気を一緒に感じる。
その延長線上に、「泊まる」がある。
そう考えると、今回の「愛犬都市旅宣言」も、単なる宿泊提案ではなく、“愛犬との暮らし方”に対する提案として見えてきます。
「人間がしたいことか、犬にとっての快適か」
客室には愛犬用のアメニティも設置されています。もちろん、愛犬向けアメニティ自体は今や珍しいものではありません。
ただ、その内容について話していた仁藤さんの言葉からは、“愛犬と過ごす場所”としての本気度を感じました。
「アメニティも、いろいろなものが考えられると思うんです。でも、それって人の満足のためではないのか、本当に犬の快適さにつながっているのか……そこは考えちゃいますよね」
ペット市場が広がる中、“ペット向け”の商品やサービスは急速に増えています。
一方で、“飼い主が嬉しいこと”と、“動物自身が快適なこと”は、必ずしも同じではありません。
“映える”“かわいい”“便利”だけではなく、“動物にとってどうか”を考える。
この視点は、これからのペットビジネス全体にとっても重要な示唆なのかもしれません。

「愛犬都市旅宣言」が示しているもの

今回OMOが掲げた「愛犬都市旅宣言」は、単なる宿泊プラン名ではありません。
これまで宿泊施設の多くは、「犬と泊まれる」という“機能”を打ち出してきました。
一方OMOが今回提示したのは、そのさらに上位概念とも言えるものです。
“愛犬と都市を楽しむ”。
その価値観自体を、宿泊施設側から「宣言」している。
そこには、“犬と泊まれる”を超えて、愛犬との都市体験そのものを提案しようとするスケール感があります。そしてこの宣言の下には、今後さらに広がっていくであろうOMO by 星野リゾートの次の展開も透けて見えます。
対象施設は増えるのか。
都市ごとに新しい愛犬体験を提案していくのか。
“犬と泊まれる”を超えた提案が、ここから始まっていく。
そんな未来を感じさせる取り組みでした。
ペット市場の「次のフェーズ」が始まっている

近年、ペット市場にはさまざまな異業種参入が続いています。
そんな中、今回の取材で感じたことは、星野リゾートが“本気で”愛犬との時間を考えようとしていることでした。
単に「ペット可」にするのではなく、愛犬とどう過ごすのか、都市でどんな体験ができるのかまで含めて設計している。
そこには、“犬を受け入れる”から、“犬と生きる時間を提案する”への変化が見えます。
「愛犬都市旅宣言」という言葉の背景には、これからのペット市場の未来像も含まれているように感じました。
ペットビジネスが次のフェーズへ、また少し動き始めている。
そんな空気も感じる取り組みと言えるのではないでしょうか。
Pet Biz JAPAN編集長 小川 類
OMO7横浜 by 星野リゾート
