ペットの商品は今、機能やスペックだけでなく、「どんな想いでつくられているのか」「誰のためのプロダクトなのか」が、これまで以上に問われています。
そんな中でPet Biz JAPANが関心を持ち、取材をさせていただいたのが株式会社はたらくとです。
同社は、ペット関連のOEM事業を基盤にしながら、自社ブランド Maluke(マルーク) を展開。「人とペットの共生と豊かさを創造する」というビジョンを、商品づくりや日々の判断に落とし込もうとする姿勢に、これからのペットプロダクトに必要な“心”を感じました。
代表取締役の山本良(りょう)さんと、愛玩動物看護師として臨床経験を持ち、現在は企画・開発を担う森瑛穂(あきほ)さんに、ブランド立ち上げの背景や獣医師との協業、そして“持続可能”という考え方についてお話を伺いました。
「理念に立ち返って判断する」——はたらくとの軸と、チームの空気感
ー 「はたらくと」さんはどのような会社ですか?ビジョンやチームの雰囲気も含めて教えてください。
山本さん:
はたらくとは、ペット領域を中心にOEM事業を行っている会社です。その一方で、自社事業として犬猫用のスキンケアブランド Maluke(マルーク) も展開しています。
会社として大切にしているのは、「人とペットの共生と豊かさを創造する」というビジョン。ここで言う“共生”は、どちらか一方が我慢する関係ではなく、人とペットがお互いにとってプラスになる「相利共生」の状態をイメージしています。
毎年社内でテーマを決めているのですが、今年掲げた言葉は「恐れず挑戦しましょう。失敗は未来への一歩です」。年間の計画を立て、部門ごとに目標を設定しながら、チームで一つずつ実行していくことを大切にしています。
森さん:
日々の業務や判断の中では、常に「人とペットの共生」のビジョンに立ち返ることを意識しています。目の前の成果だけを見るのではなく、「それは本当に人とペットのためになっているのか」「共生や豊かさにつながっているのか」という視点を大事にしています。
私が感じるチームの雰囲気は全体的に穏やかで、意見を出し合いやすい環境だと感じます。新しいことにもチャレンジしやすく、自分自身の成長を実感できる場面も多いです。メンバーそれぞれの強みや個性を活かせるので、やりがいもあり楽しいですね。

きっかけは「手が荒れる」違和感。スキンケアを“雑貨の自由度”のままにしない

ー Maluke(マルーク)は、どのような背景で生まれたブランドなのでしょうか。
山本さん:
私は以前、美容業界に携わっていたこともあり、ペット業界に関わる中でシャンプーやスキンケア製品に触れる機会が多くありました。その中で、正直に言うと複雑な気持ちになることがありました。
自分自身が敏感肌なこともありますが、犬用シャンプーを使うたびに手が荒れたり、ピリピリしたりすることがあり、「何が入っているのだろう」と疑問を持つようになったのです。
ペット用スキンケアは“雑貨”として扱われることが多く、成分表示などの面で自由度があります。その自由度が、場合によってはリスクにつながる可能性もあるのでは…と不安を感じました。わんちゃんやねこちゃんは舐めることも多いですから、飼い主さんもペットも、安心して使えるスキンケアを作れないだろうか——そんな漠然とした思いが出発点でした。
森さん:
実は、最初から「ブランドを立ち上げよう」と考えていたわけではありませんでした。今販売している洗い流さない炭酸シャンプーの開発が、結果的にMaluke(マルーク)の原点になっています。
私は前職で愛玩動物看護師として臨床の現場に立ち、海外ではドッググルーマーとしてわんちゃんを洗う仕事もしてきました。その中で特に印象に残っているのが、シニアの子や病気の子のケアです。
「きれいにしてあげたいのに、体力的に難しい」「ケアしたい気持ちはあるのに、逆に負担をかけてしまうかもしれない」——そんな飼い主さんの声を、たくさん聞いてきました。
そうした経験から、できるだけ負担をかけずに、安心してケアできる方法があればいいのにと思うようになりました。その思いが、洗い流さない炭酸シャンプーの開発につながっています。
ー ブランドとして大切にしているコンセプトを教えてください。

森さん:
Maluke(マルーク)では、「やさしさと機能性の両立」を大切にしています。やさしさをうたった商品はたくさんありますが、実際に使ってみると「もう少しこうだったらいいのに」と感じることも多くて、そこにきちんと機能性まで備えたものは、意外と少ないなと感じていました。
また、成分や表現のわかりやすさ、いわゆる透明性もとても大事にしています。売るための言葉や、少し強めの効果表現が目立ってしまうこともある中で、Maluke(マルーク)は無理におすすめするブランドではなく、
「これなら安心して使えそう」「このブランドなら信じられる」
そう思ってもらえる存在でありたいと考えています。
飼い主さんが、迷ったときに自然と手に取れるような、そんなブランドでいられたらうれしいですね。
“獣医師監修”で終わらせない。企画段階からの共創を成立させた「橋渡し役」

ー 愛玩動物看護師の森さんが開発に関わることで、一般的なペット商品と何が変わりましたか。
森さん:
一番大きいのは、獣医師の先生との関わり方だと思います。単なる“監修”という形ではなく、企画段階から一緒に入っていただくことを大切にしました。
山本さん:
実は、森が入社する前から獣医師の先生と連携したいと考えていました。ただ、私が直接お話ししても、どうしても共通言語がなく、継続的な商品開発の議論が難しかったのが実情です。
その点、森は動物病院で約10年勤務してきた経験があり、専門用語や現場のリアルを理解しています。獣医師と企業の間をつなぐ存在がいることで、初めて本当の意味での共創が可能になったと感じています。
ー 獣医師の森田先生とは、どのような経緯で協業することになったのでしょうか。
森さん:
臨床経験を持ちながら、柔軟に関わっていただける先生を探していく中で、フリーランス獣医師として活動されている森田慶先生と出会いました。臨床現場での経験に加え、飼い主さんにも深く寄り添ってこられた先生だと感じ、開発協力をお願いしました。
山本さん:
森田先生は、常に丁寧にエビデンスや資料を提示してくださり、納得感のあるやり取りができています。専門家と企業、そして現場をつなぐこうした関係性が広がれば、ペット業界全体はもっと良くなるのではないかと感じています。
ペット業界の「持続可能」を、環境・社会・経済で捉え直す
ー 山本さんが考える「持続可能なビジネス」とは、どのような状態でしょうか。
山本さん:
サステナブルという言葉は新しいもののように聞こえますが、本質的には昔からある考え方だと思っています。私は、ペットビジネスも人間社会と同じく、「環境・社会・経済」のバランスで捉えるべきだと思っていて。
環境面で言うと、近年、家畜動物で提言されているアニマルウェルフェア(動物福祉的観点)の視点は愛玩動物でも同様であり、ベースとして欠かせません。その上で、健康寿命をどう延ばしていくか。単に長生きするだけでなく、歩く・食べる・排泄するといった状態を保ち、シニア期を支える環境づくりが重要だと思っています。
社会面では、不幸なわんちゃん、ねこちゃんを生んでしまう構造への疑問があります。すべてを否定するわけではありませんが、改善すべき点は確実に存在していると感じています。
そして経済面です。幸せなペットを増やすためにも、経済活動は不可欠です。良い商品を継続的に届け、働く人の就労環境を整えるためには、適切な利益が必要です。ペット業界が持続的に発展していくためにも、経済の視点は欠かせないものだと考えています。
「同じビジョンを、妥協なく追求できる人」と、遠くへ行きたい

ー 最後に、PBJ読者に向けて、今後ペット業界でどのような“つながり”を作っていきたいですか。
山本さん:
「人とペットの共生と豊かさ」を本気で実現しようとすると、一人の力では限界があると感じています。だからこそ、同じ方向を向き、同じ想いを持って取り組める仲間やパートナーと、一緒に進んでいきたいと思っています。
社内か社外か、立場や役割は問いません。大切なのは、「ペット業界をもっと良くしたい」という気持ちを本気で共有できることです。そうした方々と手を取り合いながら、今よりも少し先の未来を、一歩ずつ形にしていけたらうれしいですね。
森さん:
私自身が一番大切にしているのは、やはりこのビジョンに共感してもらえるかどうか、という点です。
「人とペットの共生と豊かさ」という考え方に少しでも心が動いたなら、それだけでも十分だと思っています。
まだ完璧な答えや形があるわけではありませんが、同じ想いを持つ方と出会い、対話を重ねながら、一緒により良い選択をしていけたらうれしいです。そんなつながりが、これから少しずつ広がっていくことを願っています。
株式会社はたらくと
https://hataract.jp
Maluke ブランドサイト


