SNS広告やインフルエンサーマーケティングが主流となった今、あえてダイレクトメールという一見アナログな手法で、ペットオーナーとの新たな接点づくりに挑戦している企業があります。
それが株式会社アド・ダイセンです。
今回は、同社でダイレクトマーケティングを中心とした販促支援や営業を担当する田本陽介氏に、デジタル全盛の時代だからこそ見えてきた「紙媒体ならではの価値」とは何か、その挑戦についてお話を伺いました。
「犬と暮らしたから見えた」ペット業界の課題
これまで化粧品メーカーや健康食品メーカー、大手小売業など、さまざまな業界で企業のマーケティングを支援してきた田本氏が、広告代理店の営業部門にいながらペット業界へ目を向けるきっかけとなったのは、自身が犬を迎えたことでした。
「犬と暮らして半年から1年くらい経った頃、自宅に犬に関する情報が一度も届いていないことに気づいたんです。」
もちろん、必要な情報はSNSやインターネットで検索すれば見つかります。しかし田本氏は、そこに違和感を覚えたといいます。
「自分から探しに行かないと情報に出会えない。でも、本当に飼い主さんの役に立つ情報なら、もっと自然な形で届いてもいいんじゃないかと思ったんです。」
この小さな気づきが、「ペット業界で何かできないか」という新たな挑戦につながりました。
市場を調べる中で、その可能性はさらに確信へと変わっていきます。
「少子高齢化が進む一方で、ペットは家族としてますます大切な存在になっています。特に犬は一緒に旅行へ行ったり、外出したり、人との接点が多い。自社のダイレクトメール(以下DM)を活用して、ペットオーナーに情報を届けたら喜ばれるんじゃないかと思ったのです。」

市場は伸びている。それでも販促に悩む企業が多い
ペット業界でDMを活用した広告企画をスタートさせて2年、現在田本氏は250社を超えるペット関連企業や施設との接点を持っています。
多くの企業と向き合う中で見えてきたのは、ペット市場ならではの課題でした。

「ペット事業を専門にされている企業は別ですが、大手企業では本業の一部としてペット事業を展開しているケースも少なくありません。そのため、商品に魅力があっても十分な販促予算を確保できず、認知を広げたくても思うような施策を打てない…。そんなもどかしさを感じている企業さんをたくさん見てきました。」
一方で、「予算」だけが課題ではないと田本氏は言います。
「ペット関連の商品やサービスは、“家族の一員”のために選ぶものだからこそ、『この商品なら安心』『この企業なら信頼できそう』と感じてもらえることが重要です。
だからこそ、オンライン上で偶然目に留まるだけではなく、信頼できる施設やホテルから届く情報、手元に残して見返せる紙媒体など、安心感を伴ったコミュニケーションが、ペット業界ではより重要。」
こうした市場ならではの課題や特性をふまえ、「届け方」そのものに着目したのがペットオーナーに向けたDMでした。
なぜ今、ペットオーナー向けダイレクトメールなのか

率直な話、DMに対して「少し古い手法」という印象を持つ方もいるかもしれません。しかし田本氏は、デジタルと紙媒体は競合ではなく、それぞれ異なる役割を持つものだと考えています。
「デジタルにはデジタルの良さがありますし、DMにはDMの良さがあります。実際に一度は紙媒体を減らしたものの、再び戻している企業さんも少なくありません。」
特にペットオーナーは40代以上の割合も高く、紙媒体への信頼感は今も根強く残っています。
さらに、田本氏が取り組むDMにはもう一つ特徴があります。それは、愛犬の名前が記載されているということ。
「普通のDMは埋もれてしまうことがあります。でも、愛犬の名前が書かれていたら、一度は手に取って見てもらえると思うんです。」
どうすれば見てもらえるか、を考え抜いた先に、愛犬宛のDMという答えがあったと言います。
30万件のペットオーナーネットワーク構築へ
そんな田本氏が現在もっとも力を入れているのが、ペットオーナーとの接点づくりです。
犬と泊まれるホテルやペット関連施設、会員組織などとの提携を進め、現在約30万件のペットオーナーとつながるネットワークを構築。2026年12月までには100万件、将来的には200万件規模まで広げることを目標にしています。
「僕がやりたいのは、単純にDMを送ることではないんです。本当に届けたい情報と、それを必要としている人をつなげる仕組みをつくることなんです。」
ペット業界には魅力的な商品やサービスが数多くある一方で、それを必要とするペットオーナーへ効率よく届ける手段に悩む企業も少なくありません。
「だから『DMをやりましょう』ではなく、その企業にとって一番いい方法を一緒に考えて提案しています。商品によってはサンプリングの方がいいかもしれないし、イベントと組み合わせた方がいい場合もある。DMは、その選択肢の一つだと思っています。」
DMを送ることが目的ではない。企業とペットオーナーをつなぐ”インフラ”をつくること。それこそが田本氏が目指す姿です。
その実現に向け、ホテルやペット関連施設とのネットワークを少しずつ広げながら、新しい販促の形を模索し続けています。
ペットの複合施設とともに挑む、新たな接点づくり

現在、横浜のペット複合施設「WANCOTT」と連携し、「ワンちゃんと考える防災」をテーマにしたイベントの開催準備も進めています。
一見すると、ダイレクトメールとは異なる取り組みに見えますが、その根底にある考え方は共通しています。
「もともとはペット業界の方々ともっとつながりたかったんです。イベントなら企業さんとも直接お会いできますし、ペットオーナーさんの生の声を聞くこともできます。」
現在は20社を超えるペット関連企業の出展が決まり、横浜市も協力するイベントに。マイクロチップの読み取り体験など、防災を身近に感じてもらう企画も予定されています。
田本氏にとってこのイベントは、「ペットオーナーに届ける」というテーマを追い続けた先にたどり着いた一つの答え。
「これからも、企業・施設・そしてペットオーナーが直接つながり、新しい出会いや気づきを生み出す機会をどんどん作っていきたい。」と話します。
広告代理店だから見えた、新しい「届ける」の価値
近年、ペット業界では食品、住宅、家電など、さまざまな異業種からの参入が続いています。
その多くは「ペット向けの商品やサービス」を持って参入していますが、田本氏が持ち込もうとしているのは”商品”ではなく、広告代理店として長年培ってきた「届ける力」。
どれほど優れた商品やサービスであっても、それを必要としている飼い主へ届かなければ価値は生まれません。
「どうすれば、本当に必要な人へ情報を届けられるのか。」
田本氏が挑戦しているのは、単なるDM事業ではなく、その問いへの一つの答えを形にする取り組みなのです。
ペットオーナーと企業をつなぐ新たな”つながるインフラ”として、今後田本氏が描く”届ける仕組み”が、ペット業界にどのような新しい価値を生み出していくのか。その挑戦を引き続き追っていきたいと思います。
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株式会社アド・ダイセン

